きょうは、なに聴く?vol.11

自由が丘でcafeイカニカを営む、元音楽プロデューサーの平井康二氏による連載。音楽もまた、出会うもの。

きょうの曲:Ngiculela - Es Una Historia - I Am Singing /Stevie Wonder 

客:「これ、三枚おろし、って書いてあるんですけど、二枚しか入ってなかったんですー」

魚屋:「はい?」

客:「うち三人家族なんで、三枚ないと困るんです、もう一枚いただけます?」

魚屋:「いいですけど、もう一枚は骨ですよ?」

客:「はい?」


 みんなが知ってる、って思ったら大間違いです。誰かが教えてあげないと。常識とかスタンダードなものだって、どこかの時点で知識としてきちんと習得しないとね。今さら訊けない、って思ってしまうことや、知ってるつもり、は危険です。音楽も同様です。

「スティービーワンダー、って知ってる?」

「知ってる」

「どの曲が好き?」

「どの曲?」

「知ってるんだよね?」

「知ってる知ってる、でも曲は、あのCMのやつとかしか」

 割とそんなものです、多くは。僕だってある時期までは、知ったつもり、聴いたつもりで、スティービーワンダーの作品は買わなかった。有名すぎて自分のものじゃない、っていう感覚だったのかな。曲もたくさんラジオやテレビで耳にしていたし。でも、それは大きな間違いでした。もっと早くきちんと聴いておくべきでした。

 この曲が収められている『SONGS IN THE KEY OF LIFE』というアルバムなんて、今の言葉で言うと、ヤバすぎ。長きに渡って第一線で活躍している大メジャーな人は、やはり、それ相当の魅了と能力があってやってきているわけだから、聴いたつもりでスルーしてしまうのはもったいない。ユーミンやサザンとかだって、本当にすごい、はず。(はず、というのは正直、つまみ食いしかしていないから、大きな事は言えません。)音楽好きが昂じると、どんどんマニアックに走りがちで、メジャーどころをスルーしてしまうという悪い習慣が身についてしまいます。それを改めるきっかけになったのは、スティービーワンダーでした。ありがとう、スティービー!

知ったつもりにならずに、恥ずかしがらずに曖昧にしてきたことをきちんと確認すれば、魚屋さんで「これ、三枚におろしてくれますか?」って言えたり「スティービーワンダーは、キーオブライフが最高!」って言えるようになるんです。

じゃあさぁ、ビートルズだと何が好き?

えっとねぇ、、、

まさか?

Ngiculela - Es Una Historia - I Am Singing /Stevie Wonder 


平井康二(cafeイカニカ オーナー)



1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、音楽業界にて仕事をする。2009年、cafeイカニカをオープン。現在に至る。

http://www.ikanika.com/cafe/top/

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