きょうは、なに聴く?vol.7

自由が丘でcafeイカニカを営む、元音楽プロデューサーの平井康二氏による連載。音楽もまた、出会うもの。

きょうの曲:1.The Loved  2.Another New Day/Paul Weller


 モテたい。

 十代の頃にバンドを始める理由なんて大抵そんなもんです。ギターが弾けて歌が上手い男子は大抵モテる。女の子が切ないラブソングを切々と歌い上げると、なんだか好きになってしまう。そして、やはり、容姿は大事。大事なのだけれど、あまりにも良過ぎると今度は逆に、本物感というか、なんとなく胡散臭く見られてしまい、実力を正当に評価されなくなって残念な目にあうってこともある。これは、ミュージシャンに限ったことではないのかもしれませんね、僻みとか妬みとか、そういうものはどの世界にもあるもんね。

 ポールウェラーは、そんな境遇の最たるものかもしれない。

 THE JAM(※1)もカッコよかったし、スタイル・カウンシル(※2)なんて、やり過ぎなくらいスカしてた。ソロになってからもいい感じに歳をとっていて、明らかにモテた。現に、子供もたくさん、奥さんもたくさんいる模様。日本の芸能界だったら、不倫だなんだと、いつも叩かれっぱなしじゃないかな。本人にどのくらいの自覚があるのかはわからないけれど、とにかく何をやっても、カッコいい、と思わせてしまう。

 音楽的な傾向としては、かなりのソウルミュージックマニア故に、頭の固いブラックミュージックフリークには、あれは、偽物だ、なんて言われてしまったり。そういう面々の前では「そりゃ、そうだよ、ブリティッシュのインテリ白人イケメンだもん」と開き直るしかないね、もう。

 でもね、そのセンスはやはり一目を置くべきもので。とにかくカッコいい。その一言に尽きる。歌っても歌わなくても、ソウルっぽいのをやっても、ロックをやっても、ポールウェラーの世界はいつでも、イカしているのだ。

 だから。いいなぁ、かっこいいなぁ、モテるだろうなぁ、俺もああなりたいなぁあ、ちょっと真似してみようかなぁ、とりあえず髪型とかシャツとか同じにしようかなぁ、という思いを抱いて聴きましょう。十代の頃のようにね。単純で純粋な気持ちで。

 でも、歳の重ね方はなかなか真似できそうにないけどね。

 彼は一生モテ続けるんだろうなぁ、きっと。


※1:ポールウェラーを中心に1977年にデビューした、イギリスのロックバンド。

※2:1982ー1990年、ポールウェラーをリーダーに結成されたイギリスのポップ・ロックバンド。

平井康二(cafeイカニカ オーナー)


1967年生まれ。レコード会社、音楽プロダクション、音楽出版社、自主レーベル主宰など、約20年に渡り、音楽業界にて仕事をする。2009年、cafeイカニカをオープン。現在に至る。

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